多事雑論014 理科 ~酸素②~

地球の環境を最初に破壊した生物は『人類』ではなく『植物』である――というフレーズを聞いたことがあるだろうか。

植物は光合成によって酸素を生み出す。大多数の生命活動にとって必要不可欠な「酸素」にも、それを供給する「植物」にも、我々は「善玉」というイメージを持っている。植物が「地球最初の環境破壊者」とは、どういうことなのだろうか。

酸素は他の物質と化合(=酸化)しやすい性質をもつ。激しい酸化反応が「燃焼」であるように、酸素と他の物質との化合反応は大きなエネルギーを放出する。

もともと地球の大気を組成する気体に、酸素はほぼ含まれていなかった。原始大気の組成は、
初期段階「水素・ヘリウム・水蒸気」、第二段階「二酸化炭素(96%)・窒素・一酸化炭素・水蒸気」と考えられている。
ちなみに現在の大気の組成比は「窒素(78%)・酸素(21%)・アルゴン(0.93%)・二酸化炭素(0.03%)」。
酸素は原始大気中にはほとんど存在せず、大半は他の物質と化合した状態で存在していたのである。したがって、当時地球上に存在していた生物は「嫌気性(酸素を嫌う)生物」であった。

そこに「光合成」という新たなエネルギー変換を行う生物が登場した。シアノバクテリア=原始藻類である。彼らは、光エネルギーを利用して二酸化炭素と水から炭水化物を合成し、副産物の酸素を不要物として放出した。

放出された酸素は当初、海中の「鉄」と結合し、酸化鉄の状態で海底に沈殿していった。酸素供給量が増加し、海中の鉄が消費し尽くされると、海中そして大気中にも、酸素が放出され蓄積されていく。ここに、嫌気性生物の多くが死滅した。彼らにとって、酸素は劇物であり毒物だったのだ。これが地球史上最初の「大量絶滅」であるとされる。

酸素で汚染された環境に適応した生物=酸化エネルギーを利用した「酸素呼吸」を行う生物、すなわち細胞内にミトコンドリアをもつ生物=つまり我々の祖先が台頭するのは、その後のこと。
環境の組成バランスを崩し、多くの種を絶滅に追いやった最初の生物は、光合成生物だった。そして、酸素は太古の生物を死滅させた猛毒だった。善玉とか悪玉とか、軽々には決めつけられないという好例である。