多事雑論011 歴史 ~昔も今も③~日本語の乱れ

最近あまり見かけなくなった暴走族。暴走族ときいて一般にイメージされるのは「夜露死苦」「愛羅武勇」などではないだろうか。
それから、これも下火になったらしいキラキラネーム。綺羅綺羅しい派手な当て字のオンパレードである。

中国で生まれた漢字という文字は「象形文字/指事文字/会意文字/形声文字/転注文字/仮借文字」の六種類から成り、これを「六書」という。
アルファベットのように「音」のみを表す表音文字と異なり、漢字は「音と意味」の両方を表す表意文字(表語文字)である。

冒頭の例は、漢字の字義を無視して音のみを用い、和語や英語に当て字したもの。
日本語がどんどん乱れていく…と、嘆くなかれ。こうした用法は今に始まったことではない。さかのぼれば古く「万葉仮名」にその原点を求めることができるのである。

万葉仮名の例
・獲加多支鹵大王:読み「わかたけるのおほきみ」。稲荷山古墳出土の鉄剣に刻まれた銘(五世紀)。
・皮留久佐乃皮斯米之刀斯:読み「はるくさのはじめのとし」。難波宮跡出土の木簡に記された和歌の冒頭(六世紀)。
もともと文字をもたなかった日本人は、和語(大和言葉)の表記に漢字の「音」を借用し、独自の表記法を編み出したのである。

さらに日本人は、「訓読み」という新たな手法を編み出す。
これは、漢字の音ではなく「字義」に着目し、同じ字義の漢字を「和語に当てはめて発音する」という極めてアクロバティックな発明であった。

このようにして、日本人は漢字という外来の文字を用いて、独自の言語文化を形成してきた。
万葉仮名と暴走族は、時代を超えて共通していた。日本語は昔も今も、「乱れ続けている=変化し続けている」のである。