福祉雑論001 どうして何もさせないんですか?

以前、とある企業の女性役員さんから、こんな疑問を投げかけられたことがある。
「福祉の職員さんって、どうして障害の方たちに、何もさせようとしないんですか?」

聞けばこういうことだった。
中小企業と共同作業所の交流会で、畑仕事をしたときのこと。作業所のメンバーが自分で土を耕し苗を植えようと四苦八苦していたところ、職員と母親が見かねて、「大丈夫?自分で出来る?」「しんどくない?」「無理しなくていいのよ」などと心配し、手伝い、結局のところ当の本人は何もできずに終わってしまった――という出来事があったらしい。しかもこれと同じような光景は、毎年の交流会で常にあったという。
上の女性役員は「せっかく自分の力で頑張ろうとしてるのに。何で邪魔するの?」という思いを抱いていたのである。同じ思いを抱いていたのはこの女性一人にとどまらず、他の企業の役員達も一様にウンウンと頷いていた。

このエピソードを聞いて、全く心当たりのない福祉職員が存在するだろうか。
或る世界にドップリ浸かって外の空気に触れないでいると、客観的な視点を見失いがちである。客観性を失うと、主観ばかりが増幅して、特異で奇妙な、不健全な世界を形成してしまう。
上の素朴な疑問は、障害者福祉という業界に対し、外側の世界から発せられた客観的な「?」である。外気に触れる機会が極めて乏しいこの業界は、いつの間にかノーマルで健全な感覚から遠ざかっているのではないか。

冒頭に揚げた疑問は、障害者福祉業界全体への問い掛けなのである。